日本語の「ん」。もちろんみなさん、無意識に、でも完璧に日本語ネイティブとして発音されていると思いますが、
意識していないため、「ん」の発音の仕方は、ひとつだろうと何となく思っているかも知れません。
実際には、「ん」は続く音によって発音の仕方が違い、私たちは無意識に発音し分けています。そして、それらのほとんどが英語の音と同じです。ですから、カタカナ発音を矯正する時にスルーするのです。
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「ん」と「英語の鼻音」の共通点
英語には鼻音と呼ばれている子音が3つあります。
[n] [m] [N]
ここでは簡単な説明にとどめますが、どれも息の多くが鼻の方へ抜け、鼻腔で響くような音です。
さて日本語の「ん」ですが、このいずれかの鼻音と同じ発音の場合があります。
タ行・ダ行・ナ行の前の「ん」は、[n]と同じ
(例)監督 (kantoku) / 感度 (kando) / 案内 (annai)
これらを発音する時には、「ん」のところで舌先を歯茎の裏につけますよね。
そして、歯茎から離さずに、次の音を、この場合「と」や「ど」や「な」ですが、発音します。
これは、英語の [n] の発音の仕方と同じです。
パ行・バ行・マ行の前の「ん」は、[m]と同じ
(例)乾杯 (kampai) / 天ぷら (tempura) / 看板 (kamban) / さんま (samma)
※ヘボン式ローマ字では m を用いることになっています。
これらを発音する時はどうでしょうか。「ん」のところで舌をつけないで、唇をぴったりくっつけて閉じているはずです。
そして閉じた唇を離した時には、次の音を、この場合は、「ぱ」や「ぷ」や「ま」ですが、発音します。
これは、英語の [m] の発音の仕方と同じです。
英語では、 sample, number などと、音のつながり方が同じで、口の動きも同じです。
ですから、ヘボン式ローマ字表記は音を正しく表しているのです。
カ行・ガ行・マ行の前の「ん」は、[N]と同じ
(例)真剣 (shinken) / 進撃 (shingeki)
これらの「ん」はどうでしょうか。舌先は歯茎にあてておらず、「ン」を飲み込むように喉から鼻に抜けるようにしていませんか。これは英語の [N] の発音の仕方と同じです。
ただし、ご覧の通りヘボン式ローマ字でも表記は「n」のままです。
英語を考えてみると、やはり同じ音のつながりがあり、口の動きも同じになります。
(例)think[TiNk]/bank[bANk]/sing[siN]/singer[siNC]/finger[fiNgC]
英語の綴りも「n」のままで、既に出てきているように、発音記号で、[N]と表します。
ここまで「ん」についてまとめると
「ん」の一文字で、いくつか発音の仕方があって、無意識に使い分けている。
それらは、英語の[n][m][N]の発音と同じ。
ローマ字表記はいずれも「n」だが、
ヘボン式ローマ字表記では、[n][N] ⇒ 「n」 [m] ⇒「m」
ただひとつ注意しなければいけない「ん」とは
このように、英語をカタカナ発音で「ん」と言っても、意識しなくとも該当の英語の音になるので、都合がいいんです。
ただ、どの「ん」もそうであれば良かったのですが、カタカナ発音で発音すると、英語の音に聞こえない場合がひとつあって、それが英語の語尾の「n」なのです。
(例)fun、son、town
試験(siken)
と発音してみると、最後の音は [n] のように舌先が歯茎の裏につくことなく、かといって [N] のようでもなく、そのまま声が鼻に抜けるような、まさに「ん」一文字の音で言ってますよね。でもこれは、英語話者には聞き取ってもらえない( n に聞こえない)ので注意が必要なのです。
語尾の「 n 」については、別記事に書いているので詳しくはそちらを見ていただければ、と思います。
だから、語尾の「n」は、発音指導において、やいやい(笑)言うんです。
カタカナ発音の矯正において、自動的に皆さんできるところは、指導しない、説明も(している時間がないので)しない。
このように、発音インストラクターは、日本人が陥りやすい発音の間違いに焦点を絞って教えているわけです。