とても深く発音に興味をもって学んでくださっているある生徒さんから、先日なかなか深~い質問がありました。今回はちょっとマニアックな発音記号のお話です。
「tunnel の発音が難しい、のと、発音記号通りに発音できない」という趣旨の質問でした。
あいまい母音には表記のばらつきあり
tunnel の発音記号は [tV^nl] です。
多くの辞書にはそう載っていますが、実はたまに [tV^nEl] と表記されている辞書もあります。
[E]のあいまい母音が入っているか入っていないかの違いです。
私はテキストを作る際に、どちらを採用するか悩んだのですが、結局前者にしました。でも厳密に言うなら、後者の表記の方が実は正しいと思っています。
なぜなら、nからlにつなげて発音する時に、どうしてもどうやっても小さな母音が入るからです。後者の方が音をより正確に表していると思うのです。
どちらを採用するかは対象者と目的次第
じゃあ、なぜ [tVnl] にしたかというと、日本人が発音練習する時には、ほとんどの人が強く母音を入れてしまうからです。
弱くほとんど出さないように、と言っても、カタカナの影響から、強く発音してしまうものですし、
視覚で確認する記号内に母音が入っていない方が、みなさんそこに母音がないつもりで発音してくれるので、ちょうどよい加減の弱いあいまい母音を入れた正しい発音になるのです。
また、こういう単語はたくさんあるので、正確性を求めるあまり全部に[E]を入れていると複雑になってきますし、発音記号って難しい印象にもつながります。
というわけで、日本人がより早く正確な発音に近づけることを念頭に決めたのです。でも、先ほども言いましたが、音は確かに [tVnEl] なんだよなあーという気持ちもあります。
で、この生徒さんは、「n からすぐに l を発音するなんてできないんですけど。。」と感じて、かなり鋭いご質問でした。ここまで気づく方は、あまりいません、ご自身が習って正しい発音を身につける、という目標ではあまり考えなくていい部分ですから。
インストラクター目線や発想ですね。
その他の単語例と発音
ちなみに、他には、
pencel [pensl] or [pensEl]
signal [signl] or [signEl]
double [dVbl] or [dVbEl]
などたくさんあります。
上記はいずれも2音節の単語です。音節の観点から考えてもやはり母音はあるはずなんですよね。(※1音節には必ず母音ひとつを含む)