子音「t」は、音の変化が多いです。たぶん子音の中で一番だと思います。それが英語の聞き取りにくさにもつながりますので、「t」音の変化についてまとめました。
例えば、「water」が「ワラ」に、「let it go」がレリゴーに聞こえる、と感じたことがあるかも知れませんが、これらも変化した「t」を日本語の音にあてはめた結果ですね。
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「t」音とその変化について
「t」とその音変化について簡単にまとめると、以下のようになります。
①「t」本来の音(破裂音)
② 脱落する
③ dっぽい音になる(tとdの中間のようで弱めの音)
④ 吸収されたような独特の音になる(鼻腔破裂)
どういう時に変化が起きるか、見ていきましょう。着目するのは「t」の位置と前後の音です。
①「t」本来の音(破裂音)
語頭の「t」とアクセントのある母音の前の「t」は、強く息の音が聞こえます。
time [tO^im] / thirteen [TC:ti^:n]
破裂音である「t」本来の音ですね。
特筆したいのは、多くの人が頭で分かっていても、日本語の「たちつてと」の音に影響されてしまい、息の強さが出ていないことです。単音で「t」が出せる方も、単語や文章内では「タim」と言ってしまう。本当に息をはじく音が聞こえるかを自分の耳で確認する意識が大事です。
② 脱落する
・語尾の「t」
語尾の t は、音が聞こえなくなる時があります。舌先を t の位置につけるが、舌先を離さずに息を開放していないのです。
I found it. I can make it.
ちなみに、
In that case, ~
などを発音する時に、t の音が聞こえなくても、つまったような「間(ま)」がわずかにあるので、in the caseと区別されます。t を完全にとばさずに、必ず舌を[t] の位置につけるようにします。
・語中で「nt」の場合
語中で、n の後に t が続く場合、「 t 」の音が脱落することがあります。特に速く読む時。
twenty [twe^nti:] → [twe^ni:]
internet [i^ntCnet] → [i^nCnet] 又は [i^nCne](語尾 t の消失)
・語中で「stn」の場合
語中で、s と n にはさまれた t は、脱落することがあります。
fasten [fA^sn] / mustn‘t [mV^snt] / chestnut [tSe^snVt]
③ dっぽい音になる(tとdの中間のようで弱めの音)
アメリカ英語の特徴的な「t」の変化音です。
「ソフトd」や「フラップt」などと呼ばれています。英英辞書によっては、発音記号の t の下にアンダーラインを引いて、示している場合もあります。
better [be^tC] / water[wc^:tC] / little [li^tl]
アクセントがなく、かつ、母音にはさまれた「t」や、「母音+t+l」などに起きます。
母音にはさまれることで無声音「t」も有声音化して「d」のような弱い音になります。舌は軽くたたく程度になり、結局はラクに発音できるためです。
※ water が「ワラ」に聞こえるのは、この「ソフト d」化のせいです。カタカナになると、ラ行に置き換えられていますが、本当は d に近い音です。
文中でも「ソフト d」になります。
「母音+ t」 で終わる単語で、次の単語の始まりが母音だと同じように母音にはさまれるからです。
put it on / cut it off
④ 吸収されたような独特の音になる(鼻腔破裂)
「t」の後に「n」が続くと、「t」の間(ま)はあるのに、はっきり聞こえない、飲み込まれたような独特の音になります。鼻腔破裂、といった専門的ないい方もありますが、便宜上、私はイメージしやすいように「吸収 t」と呼んでいます。
written [ri^tn] / button [bV^tn] / eaten [i^:tn]
「t」の所で舌をはじかず(歯茎から離れず)次の「 n 」に移るため、破裂音が聞こえなくなります。一応、t を言おうとしているので、舌を離さないでいると圧力が高まった空気は鼻の方に抜けます。吸収されたような感じです。
要は、ラクに発音するためにこうなるんですね。
「t」で舌先をあてて、次の「n」でもまた舌先をつけるとなると、2回連続であてないといけないので、1回つけるだけで済ませてしまうのです。
ですから、「t」の次に(舌先をつけて発音する)「l」が続く場合も、同じ理由で、吸収された「t」になります。
exactly/perfectly/shortly
付け焼刃か、英語感覚を身につけるか
冒頭で言ったように、「water」が「ワラ」に、「let it go」がレリゴーのように聞こえます。
確かに「ウォーター」と、カタカナで言うよりは、「ワラ」の方がまだ通じやすいかも知れませんが、もし、
その場さえ通じたらいいとか、
海外旅行が後にも先にもこれ一回で、その時に使うであろう単語が通じるように急いで覚えたい、
というなら、「ワラ」、「リロ」というようにカタカナ表現をひとつひとつ覚えるのも、アリでしょう。
しかし、そうでない英語学習者なら、カタカナ視点よりも英語視点で考え、覚えた方が得策だと思いませんか。「t」の音変化は、割とパターン(ルール)が決まっているので、覚えやすいですし、ひとつのパターンが分かると「あ、この単語もだからそう聞こえるのか」というようにあてはめられます。
慣れると発音しやすい
最初はルールを頭で考えてから「 t 」 の変化を発音している場合でも、慣れてくると変化させた方が実は言いやすいので、だんだんと感覚的に発音が身についてこられた方などは、自然にかつ無意識に「t」の音を変化させたり、リエゾンさせたりして音読している、ということもよくあります。
指導していて、うれしいなあと感じる場面です。
学生時代の素晴らしい復習でした❕
ご参考になったのなら何よりです。コメントありがとうございます。